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材料・界面部会へのお誘いとお願い

 

平成2324年度部会長 宮原 稔(京都大学)

 

 平成22年に材料・界面部会は発足8年を迎え,迫原前部会長のご尽力と統率の下,化学工学会の部会運営規程に基づいた継続申請を行い,高い評価を得てその継続が承認されました。もとより,部会員数や秋季大会発表件数は学会内で最大クラスを誇ってきた当部会ですが,いわば「第二中期」を迎え,その活動のさらなる充実が期待されるところです。

 振り返れば,小職の学会活動はずっと部会とともにあったと感じます。平成14年発足時の江見部会長と,続く平成1516年の東谷部会長の下では,事務局として奉職させていただき,さらに,今野部会長,中野部会長,迫原部会長の下で副部会長を拝命してきました。ただし,特筆できるような活動成果は出せておらず小職の微力なること如何ほどかと恥じ入るところですが,つきあいの長さゆえに部会に対する親愛の度だけは高く,それゆえに,この度,若輩の身ながら部会長の任を仰せつかったものと理解いたしております。

 以下には,歴代部会長や役員・部会員各位のご尽力による第一期での発展の結果としての【いま】と,僭越ながら新部会長としての方針を含めての【これから】を,これまで運営に携わらせていただいた立場から概説を申し上げ,学会会員諸氏への部会入会のお誘いと,現部会員各位へのご協力のお願いとさせていただきたく存じます。

【部会のいま―活動概要―】

 現在の組織および定期的な行事を以下に概説し,併せて,諸行事への積極的な参加をお願い申し上げます。

<分科会>

 五つの分科会が,協力しながら、また独自性を発揮しながら,セミナーや討論会などの活動を行っています。キーワードとともに以下に列挙します。

・自己組織化分科会

  微細構造,界面活性剤,コロイド分散系,秩序化

・塗布技術分科会

  薄膜,コーティング,複合膜,roll to roll

・晶析技術分科会

  核形成,結晶多形,溶解度,粒径・形態制御

・機能性微粒子分科会

  マイクロカプセル,ミクロスフィア,単分散,コロイド粒子

・高分子・ゲルテクノロジー分科会

  構造・相制御,成形加工,レオロジー,刺激応答機能,ソフトマテリアル

部会の発足当初は七つの分科会でしたが,複数の分科会が互いの共通性を見いだし,発展的に融合した結果です。今後も,研究・開発分野の変遷に対応しつつ,機動的な分科会の設置・改組が望まれます。

 

<秋季大会シンポ>

 3〜4セッションの分科会主催シンポに加え,部会の全体シンポ(口頭およびポスター)があり,プロセッシングを機軸とした機能性材料の合成,微細構造制御,機能性発現の解明,新規プロセッシングの提案などが活発に議論されています。議論重視の観点から,発表12分+質疑7分とし,責任を持って議論できる発表者のご登壇をお願いしています。また,初日の全体シンポ冒頭はPlenaryセッションとし,部会や分科会推薦者による最近の研究動向紹介や若手の基調講演等を企画しています。一方,ポスターセッションでは優秀ポスター賞も設定して発表者の動機付けを高め,口頭発表では困難な深い議論の場となっています。

 

<日韓シンポ>

 元九州大学・諸岡先生のご尽力による2国間交流を材料・界面部会が引き継ぎ,隔年に,また日韓相互に開催しており,平成2211月の麗水市での開催をもって第九回を迎えました。韓国側の発表内容が韓国側ヘッドの専門領域に偏る傾向はあるものの,互いの最先端研究の交流とともに,KIChEにおけるキーパーソンの知己を得る貴重な場ともなっています。次回は平成24年度に日本での開催予定で,ぜひ多数のご参加をお願いします。

 

<材料化学システム討論会>

 様々な材料について,素材の合成,集積化による物性の発現から,材料のアプリケーションに至るまでを対象に,材料の高機能化を探ろうとする企画で,従前の「高分子俯瞰シンポジウム」を発展させ,平成21年から開催されています。本討論会の特徴は,若手の部会員によって企画・運営されることで,部会の枠を超えて,若い研究者達を中心に(自称「若手」を含めて)熱い,活発な議論が毎回繰り広げられています。

 

【部会のこれから】

 これまでの8年という長い期間を考えれば,通常ならば「マンネリ化」が危惧されるものですが,上記のどの行事を見ても,適度の改変・変遷や企画内容の向上がなされており,良好に運営されていると感じます。したがって,現状を過度にいじくり回すことは避けるべきでしょう。しかしながら一方で,現状のアクティビティを俯瞰すれば,以下のような活動が,会員・役員各位の過度の負担とならない範囲で,望まれるところではないでしょうか。

●院生・助教層を対象とした企画●

 准教授や教授ともなれば,いやでも(?)対外的活動が増え,人的・技術的交流の機会も豊富となりますが,学生や,経験の短いポスドク・助教層では,必ずしも十分とは言えないかもしれません。一方で,この年代こそ,多様な人々に接して意見交換や議論を行い,自らの肥やしとして取り込むことが重要と思います。

 昨今,こうした意図や「若手育成」の観点からも,私の関連する複数の学会を始め,多くの学会がフランクな交流行事を持っており,私の研究室からも少なからぬ学生・助教層が参加しています。むろん,その学会が,参加者にとって「メインの学会」ならばそれで良いのですが,もし「メイン学会が化工なのにそのような行事がないので」という状況ならば問題です。

 化学工学はむろん基幹学会たるべき存在ですが,そのサイズと守備範囲の広さゆえに,学会全体としてのこうした行事への取り組みは不可能でしょう。一方,各支部では「学生の会」などが組織されていますが,同様に,研究領域の広さから技術的交流は限られ,「同世代クラブ」の域を出ません。したがって,学術および技術交流を指向するならば,部会こそが,その任に適した組織ではないでしょうか。こうした意義から,部会の「夏(?)の学校」とでも命名されるべき企画が望まれるところと感じます。その意義・妥当性・可能性などについて,今後,幹事会はじめ種々の場でご意見を頂戴できれば有り難いと考えている次第です。

●産学連携●

 工学の使命を考えれば本項目の重要性は論を待ちません。一方で,「材料」という,ややもすれば,手法よりもモノの個性が重要視されがちな領域ゆえに,個々人のレベルでの「産学連携」は多く認められる一方で,部会という組織としての産学連携活動については,過去にワーキンググループ的に検討がなされてきたものの実現を見ておらず,まだ「模索」の段階にあるというのが正直なところでしょう。

 部会設立の趣意にもあるように,「化学工学の材料創成」は,「プロセッシングによる構造と機能の制御」が理想であり目標です。これは,一昔前には,極言すれば「遠い理想」であったかもしれませんが,この10年ほどの間に,このような研究・技術は格段の進歩を遂げつつあるように感じます。短兵急の愚は避けねばなりませんが,この機に,改めて,部会として産業界に貢献できる連携のあり方を深く検討し,その実施に向けて動き始めることを目指したいと考えています。

●共通基盤技術●

 部会発足当初,7つの分科会からなるその組織・領域の広さが一つの危惧要因でした。単なる分科会の集合体であっては部会の未来はないとの観点から,多くの分科会に共通する学術・技術・基礎現象を総合的に議論することで,分科会をまたいだ交流を図るべく「共通基盤技術シンポジウム」の企画が検討されました。その結果,第一に重要な共通課題として「核生成」をキーワードに掲げ,外国人招聘研究者を含む内外の研究者による依頼講演と議論の場として平成15年に開催を見ました。その後,平成18年の第4回をもって当初の役割を果たしたとの認識で,以後は開催されていません。

 前項とも関連しますが,やはり近年の材料・界面分野での研究・技術の進歩を振り返れば,重要な,取り上げるべき分野共通の基礎現象・基礎技術は潜在しているのではないでしょうか。また,部会としての産学連携の基礎としても,当部会をより一層活性化すべく,新たなキーワードを模索し,必ずしも「シンポジウム」という形態にとらわれずに,行事企画の検討を進めていきたいと考えています。

 

  浅学の身で勝手なことを申し上げてしまい,たいへん恐縮ですが,今後のさらなる部会の発展のために,多くの方に部会への加入をいただき,各分科会にあっては独自性と協調性をバランスさせつつ活動いただき,また,会員各位におかれましては,部会活動により一層のご協力を賜りますようお願い申し上げ,小職からのご挨拶とさせていただきます。

 


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